【構造生物学】うつ病治療薬SSRIの設計図
Nature
2016年4月7日
数多くの抗うつ薬の標的となっているヒトセロトニントランスポーター(SERT)の分子構造について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この論文では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のうち最も処方数の多い2種の作用機構について記述されている。
神経伝達物質の一種であるセロトニンは、神経学的過程(睡眠、空腹、気分、攻撃など)に影響を及ぼす。SSRIは、セロトニンの再取り込みを阻害し、それによってセロトニンのシグナル伝達活性を延長させるため、うつ病と不安障害の治療に利用される。SSRIは幅広く用いられているが、SERTを阻害する分子機構は十分解明されていない。
今回、Eric Gouauxたちは、X線結晶構造解析を行い、2種類の抗うつ薬(S)-シタロプラムとパロキセチンと結合したヒトSERTの構造を解明した。Gouauxたちは、これらの抗うつ薬は、SERTを「外向きに開いた」コンホメーションにロックし、セロトニンと膜タンパク質SERTの結合を直接阻害することを明らかにした。今回の研究で、セロトニンの結合部位を標的とする低分子を設計するためのプラットフォームが得られ、新種のSSRIの開発に結びつく可能性もあるとGouauxたちは考えている。
同時掲載のNews & Views記事で、Marc CaronとUlrik Getherは「そうしたタンパク質[SERT]の詳しい分子構造を可視化できれば、うつ病などの疾患にとっての選択的で有効な治療法を開発する機会がこれまでになく大きなものとなる可能性がある」と述べている。
doi:10.1038/nature17629
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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