神経科学:脳内音声処理が脳震盪の診断に役立つかもしれない
Scientific Reports
2016年12月22日
脳震盪を起こした子どもの診断に役立つ可能性がある生物学的マーカーが発見されたことを報じる論文が掲載される。この初期研究では、脳震盪が発話音声の神経処理を阻害するという仮説の検証が行われ、発話音声が引き起こす周波数追従反応(FFR)、つまり音声を聞いた時に脳内で発する神経信号を測定することが、脳震盪の診断と管理に役立つ可能性のあることが明らかになった。
現在のところ脳震盪の診断を確実に下すための単独の検査法が検証されておらず、臨床医は、複数の器官系にわたる一定数の症状を比較評価する方法に依存して診断を下している。一方、脳震盪を始めとする軽度外傷性脳損傷の影響の1つとして、音声の意味を理解する能力の低下が挙がっている。
今回、Nina Krausの研究チームは、平均年齢13歳の40人の子ども(そのうちの20人が脳震盪を起こした)を対象として、発話音声の基本周波数(音声と話者を追跡、特定するために用いられる音響キュー)を処理する能力が阻害されるのかどうかを調べた。その結果、脳震盪を起こした子どもには特徴的な神経プロファイルがあり、脳震盪を起こしていない子どもと異なっていることが明らかになった。また、各グループの参加者のFFRの測定結果からは、音声の神経処理を監視することで、脳震盪症例の90%と対照症例の95%を正しく判定できることが分かった。今後は、新たなコホートにおける検証など、いろいろな研究を積み重ねる必要があるが、脳震盪の診断と管理においてFFRが役立つと考えられることをKrausたちは指摘している。
doi:10.1038/srep39009
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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