Research Press Release
患者のiPS細胞由来のニューロンを、自閉症の研究に利用
Nature Medicine
2011年11月28日
神経発達障害の1つ、ティモシー症候群の患者では、皮質ニューロンの運命と神経伝達物質の発現が変化しているとの報告が寄せられている。この発見を糸口に、この病気の原因となる神経機構が解明できるかもしれない。 ティモシー症候群は自閉症に似た特徴を示し、カルシウムチャネルの過剰な活性化につながる変異が原因となる。 R Dolmetschたちは、ティモシー症候群患者由来の誘導多能性幹細胞からニューロンをつくり、これを、健常な対照群から得たiPS細胞由来のニューロンと比較した。すると、ティモシー症候群からのiPS細胞由来のニューロンでは、脳梁(大脳皮質の両側をつないでいる密集した軸索群)を通って他の領域へと延びる皮質ニューロンに特徴的なマーカーの発現が低下していることがわかった。また、ティモシー症候群患者由来のニューロンでは、神経伝達物質であるノルアドレナリンとドーパミンの生産が増加しており、その原因はこれらを生産する酵素の発現の亢進であることもわかった。この酵素の発現亢進は、カルシウムチャネル阻害剤によって抑制された。 ティモシー症候群にみられる自閉症類似の表現型に、脳でのこのような変化がどのように結びつくのかを解明するには、さらに研究が必要である。
doi:10.1038/nm2576
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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