【植物科学】重要作物キヌアのゲノム塩基配列が改良に役立つ可能性
Nature
2017年2月9日
キヌア(Chenopodium quinoa)の質の高い参照ゲノムが初めて組み立てられたことを報告する論文が、今週掲載される。この新たな情報資源は、キヌアの遺伝的改良と育種活動に役立ち、世界的な食料安全保障を増強できる可能性がある。
キヌアは、栄養価が高く、グルテンを含まず、血糖指数の低い作物で、そこに含まれる必須アミノ酸と繊維、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルが絶妙のバランスを保っており、幅広い環境条件で成長する。しかし、キヌアは、作物として十分に活用されておらず、全世界での生産量を増やすためにはキヌアの農業形質を改良する育種活動が必要とされる。
今回、Mark Testerの研究チームは、チリ沿岸地帯に生息する品種のキヌアと別の数種のアカザ属植物のゲノムの塩基配列を解読し、キヌアの遺伝的多様性の特徴を解析し、そのゲノムの進化を解明した。またこのゲノムデータの解析によって、サポニンの産生を調節する1つの遺伝子を同定した。サポニンはキヌアの種子を覆う苦味分子で、キヌアを食べる前に洗い流しておかなければならない。Testerたちは、今回の研究で同定された遺伝的マーカーを利用して、サポニンの含有量が減った苦味のないキヌアや甘いキヌアの商業品種を開発できる可能性があるという考えを示している。そしてTesterたちは、増え続ける世界人口のための食料安全保障を増強する目的でキヌアの遺伝的改良を加速させる上で今回の研究で得られた新知見が基盤になると結論づけた。
doi:10.1038/nature21370
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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