夢を見ることに特異的な脳活動パターン
Nature Neuroscience
2017年4月11日
レム(REM)睡眠時とノンレム(NREM)睡眠時に夢を見ていることが、特定の脳領域内で脳活動が変化する特異なパターンによって示されることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、夢に対応する脳活動パターンの通説的理解に異を唱えるものとなっている。
夢を見ることは、脳波検査(EEG)で計測されるレム睡眠時の高周波脳活動の増加に関連していることが多いのに対して、夢を見ていないことは、ノンレム睡眠時の低周波脳活動の増加に関連していることが通例だ。ところが、ノンレム睡眠から目を覚まして夢を見ていたと申告する者とそれとは逆にレム睡眠から目を覚まして夢を見ていなかったと申告する者について記述された研究論文が複数発表されている。
今回、Giulio Tononiたちの研究チームは、32人が参加する実験を行い、睡眠時の脳波検査記録をとり、睡眠中の被験者を起こして夢を見ていたかどうかを尋ね、夢を見ていた被験者に夢の内容と長さを尋ねて、レム睡眠時とノンレム睡眠時に夢を見ていることに対応する脳活動パターンの共通の変化を明らかにすることを試みた。その結果分かったのは、レム睡眠時とノンレム睡眠時のいずれの夢も脳の後部領域(Tononiたちが「後部皮質ホットゾーン」と呼ぶ領域)での低周波脳活動の強度の低下に関連していたことだった。この結果は、被験者が夢の内容または長さを思い出したかどうかと無関係だった。また、夢を見ることは、高周波脳活動の強度上昇にも関連しており、それがノンレム睡眠時に同じ後部皮質ホットゾーンから始まり、前頭部と側頭部に向けて広がっていた。レム睡眠時に夢を見た場合も前頭部と側頭部での高周波脳活動が増加していた。
これとは別に、夢の内容について詳細な申告をした経験のある7人の被験者を対象とした実験も行われ、レム睡眠時に、通常は現実の感覚刺激(例えば、顔や話)を処理するために動員される脳領域で高周波脳活動が増加し、この変化が夢に顔や話のような要素が含まれていた場合に特異的に生じたことが明らかになった。さらに、Tononiたちは、後部皮質ホットゾーンでの低周波脳活動の減少と高周波脳活動の増加を組み合わせることで、特定の人がノンレム睡眠時に夢を見ることをリアルタイムで予測でき、その精度が約90%に達することを明らかにした。
doi:10.1038/nn.4545
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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