【電子工学】シリコンを用いたマイクロプロセッサーに代わるもの
Nature Communications
2017年4月12日
原子わずか数個分の厚さの半導体を用いて作られたマイクロプロセッサーが実証されたことを報告する論文が掲載される。この技術的進歩は、従来のシリコンエレクトロニクスから原子レベルで平坦なナノエレクトロニクスへの移行を促進するものとなる可能性がある。
今回、Thomas Muellerたちの研究チームは、半導体だけで作られたマイクロプロセッサーとしては最も複雑なものを実地に実証した。この半導体は、二硫化モリブデン(MoS2)という二次元材料と原子レベルで平坦な集積トランジスター115個からなる回路でできている。このMoS2コンピューターは、従来のシリコンを用いたマイクロプロセッサーのように、外部メモリーに保存されたユーザーが定義するプログラムを実行でき、論理演算を実行し、周辺機器にデータを転送できる。この二次元マイクロプロセッサーは、原子レベルで平坦なものであるため、従来の大きな三次元シリコンエレクトロニクスが直面している回路の複雑化とトランジスターの小型化に伴う課題はない。シリコンエレクトロニクスの集積度が限界に達しようとしていると考えられることに懸念が生じているが、小さな二次元トランジスターの製造法には原理的に物理的限界はない。
今回の研究で実証された二次元マイクロプロセッサーは、既存の半導体製造プロセスに適合しており、より複雑なアーキテクチャーと機能性を備えるように直ちにスケールアップできるため、実際に作動する有望なシリコンエレクトロニクスの代替品となる可能性がある。
doi:10.1038/ncomms14948
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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