【材料科学】化学の言葉を使ったナノ粒子間の情報伝達
Nature Communications
2017年5月31日
化学伝達物質を使って相互に情報伝達を行うナノ粒子について報告する論文が、今週、掲載される。この研究成果は、将来のナノスケール・コンピューティングと情報処理の開発の手掛かりとなる可能性がある。
生き物は、分子を使って情報伝達を行う。例えば、多くの動物はフェロモンを使って警報を送ったり、交尾相手を引き付けたりするし、ニューロンは、神経伝達物質を介して情報を伝達する。一方、人工のナノ材料は、こうした情報伝達ができるほど発達していない。化学種の間で双方向の情報伝達を実現するのは難題となっており、これまでの研究報告によれば一方向の情報伝達しか実現していない。今回、Ramon Martinez-Manezたちの研究グループは、自然界から着想を得て、双方向の情報伝達によって情報の共有と処理を行う一対のナノ粒子を設計した。この情報は化学的「言語」に符号化されており、ナノ粒子は、この言語を発することができ、理解することができる。それぞれのナノ粒子には酵素が含まれており、この酵素が分子を認識して、もう一方の粒子に含まれる酵素が読み取れるシグナルに変換する。このシグナルを受け取った粒子は、この情報を解釈して、応答を返す。
このような対話するナノ粒子は、自然界に存在するコミュニティーにかなり類似した、情報のやり取りのできるナノデバイスのネットワークの創出という研究目標に向けた一歩前進だ。こうした情報伝達ネットワークは、ナノスケール・コンピューティングと論理系あるいは「インテリジェントな」ナノマシンに利用できる可能性がある。
doi:10.1038/ncomms15511
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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