【天体物理学】連星ブラックホールの起源を重力波から突き止める
Nature
2017年8月24日
3つの重力波シグナルと第4の重力波となり得る候補シグナルの解析結果を報告した論文が、今週掲載される。この研究結果は、連星ブラックホールの形成と進化の過程について解明を進めるものといえる。
連星ブラックホールの合体によって生じる重力波を調べると、このブラックホール系の形成に関する貴重な手掛かりが得られる可能性がある。連星ブラックホールの形成に関しては少なくとも2つのシナリオが存在すると考えられており、連星ブラックホールにおけるスピンの組み合わせ(ブラックホールを形成する物質の角運動量)を調べることは、この2つの競合する学説を検証する方法となる可能性がある。同時期に誕生した一対の星(連星)に由来するブラックホールの場合は、それぞれのブラックホールのスピンの向きが同じだと予想されており、すでに崩壊した星の力学的相互作用によって形成したブラックホールの場合には、それぞれのスピンの向きが異なっている可能性が非常に高いと考えられている。
今回、Will Farrたちの研究グループは、2015年に発見されたGW150914、LVT151012、GW151226と2017年に発見されたGW170104という合計4つのブラックホール合体現象のスピン特性を調べた。もしこれらのブラックホールのスピン速度が天の川銀河で観測されたブラックホールと同等であれば、スピンの向きはランダムに決まり、連星がブラックホールになった後で合体が起こったことが示唆される。Farrたちは、ブラックホール合体現象の観測がわずか10回加われば、高い信頼性で連星ブラックホールの起源を断定できる可能性があるという見方を示している。これまでは、このレベルの信頼性を達成するためにかなり多くのブラックホール合体現象を発見する必要があると考えられていた。
同時掲載のSteinn SigurdssonのNews & Views論文では、このFarrたちの研究結果は「(連星ブラックホールの)形成に関する主要な学説を検証するために必要なデータの数を示し、必要な観測数が近い将来に達成される可能性のあることを明らかにした点が重要」だと指摘されている。
doi:10.1038/nature23453
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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