【神経変性】アルツハイマー病の舞台で、APOE4が二役
Nature
2017年9月21日
遅発性アルツハイマー病の重要な遺伝的リスク因子であるAPOE4が、有害なタウタンパク質蓄積に影響を及ぼして、タウを介した神経変性や神経の炎症を悪化させることが、マウスで明らかになった。この研究によって、アルツハイマー病の主な2つの神経病理学的特徴に対してAPOE4が別々に作用し、どちらにも悪影響をもたらすことが分かった。
APOE4は、1993年に遅発性アルツハイマー病の強い遺伝的リスク因子として見つかったが、アルツハイマー病にどのような仕組みで関わるのかは、いまだにほとんど解明されていない。APOE4が、アルツハイマー病の重要な誘発因子であるアミロイドβタンパク質の脳内での沈着に影響することは知られている。しかしこの変異体が、アルツハイマー病のもう1つの重要な特徴であるタウの異常にも関係するかどうかは不明である。
D Holtzmanたちは今回、タウオパチー(脳内でタウタンパク質がもつれて凝集し、害を及ぼす)のマウスモデルを使って、APOE4タンパク質がタウの病原性に影響を及ぼし、神経の炎症やタウを介した神経変性を悪化させることを明らかにした。マウスでは、APOE4がこれらの病理過程に“有害な”機能獲得型の作用を示すことが分かった。一方、APOE4がないことは防御的に働き、タウを介した神経の炎症や神経変性を弱めるらしい。これらの知見が臨床に活かせるかどうかを判断するにはさらに研究が必要だが、今回の知見が示唆するように、APOE4は、タウが関わる神経変性を抑制するための有望な治療標的になるかもしれない。
doi:10.1038/nature24016
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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