反水素原子を長時間閉じ込める
Nature Physics
2011年6月6日
反水素原子を生成して捕捉し、最長1,000秒間保存したことが、Nature Physics(電子版)で報告されている。この偉業は、反水素原子を捕捉している時間がこれまでで最も長いというだけでなく、「物質と反物質は同じ物理法則に従っているのか?」という問いの答えに私たちを近づけるものでもある。 反物質粒子は、宇宙空間だけでなく粒子加速器でも日常的に生成されているが、それらを捕捉し続けるのは、特に中性粒子では極めて難しい。これは、反物質と物質は接触すると対消滅し、通常の容器は物質でできているからである。昨年、CERNの共同研究グループALPHAは、通常の容器の代わりに磁気トラップを用いて、反水素原子を捕捉できることを実証し、172ミリ秒間保存することができた。今回、このチームは、保存時間を5,000倍以上に延ばしている。これは、これまでの実験で生成された反水素原子は高励起状態でのみ存在し、即座に対消滅してしまったが、今回の反水素原子には、基底状態に達する時間があるということである。保存時間がこのように長いため、捕捉された反原子の特性を初めて測定できるようになり、反水素原子の生成ダイナミクスと運動エネルギー分布が得られた。 改良されたトラップによって、将来の実験に十分な相互作用時間が得られ、レーザーやマイクロ波で反原子の量子的性質を調べたり、冷却して反物質に対する重力の効果を研究したりといったことが可能になるかもしれない。
doi:10.1038/nphys2025
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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