片眼視覚遮断後の視覚機能の回復
Nature Communications
2011年5月18日
片眼遮断(片方の眼の視覚を遮断すること)があった後の視覚機能の回復可能性に関する2つの研究結果が明らかになった。これらの研究に関する論文は、今週、Nature Communicationsに掲載される。
K MonteyとE Quinlanの研究では、ラットを用いた実験が行われ、片眼遮断を長期間続けた結果、脳の一次視覚皮質のニューロンの樹状突起棘の数が減り、視床と皮質の間のシナプスの強度が低下した。そして、成体期に暗所に置くと、樹状突起棘の密度とそのシナプス伝達強度が回復した。この知見は、成体期に暗所に置くことで、幼若期の視覚皮質に見られるさまざまな形のシナプス可塑性を再活性化することを実証している。
一方、M Spolidoroらの研究では、成体期における食餌制限によっても片眼遮断からの回復がもたらされることが判明した。Spolidoroらは、ラットの実験で、片眼遮断を誘発してからカロリー摂取量を1か月間減らしたところ、その後、視覚によって誘発される複数の応答が回復した。Spolidoroらは、この結果をもとに、成体期には食餌制限によっても可塑性が回復しうると結論付けた。ただし、片方の眼の視覚を遮断された人間にラットに用いられた食餌制限法を適用して回復効果が得られるのかどうか、そして、この食餌法が実行可能なのかどうかは、現時点では明らかではない。
この2つの研究は、成体の脳に可塑性を促進する能力があることを明らかにしており、人間の視覚障害からの回復に影響を与える可能性がある。
doi:10.1038/ncomms1312
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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