気候変動を理由とする移住によって人口構造が変化すると残留する人々に対する気候変動の影響が緩和される
Nature Climate Change
2017年10月24日
開発途上国において気候変動のために国外移住が必要になると、人口構造が変化し、究極的には国内に残る人々の間の所得の不平等が緩和されることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、人間が移住すると、それ自体ではなく、人口構造の変化を介して、気候変動の悪影響の一部が緩和されることを示唆している。
今回、Soheil Shayeghは、開発途上国における気候変動と人口構造の変化と国外移住の総合評価モデルを作成した。その結果分かったのは、技能を有する者の方が移住のチャンスが大きく、子の教育に対する投資額を増やすことへの親の意欲が高まり、子の総数を減らす傾向が生まれていることだ。しかし、外国へ移住できるのは、技能を有する子の一部にすぎない。そのため、移住せず本国に残留する労働者の技能構成が変化し、所得の不平等による格差が縮まる。つまり、熟練労働者の需要が減って、その賃金水準が下がり、未熟練労働者の需要が増して、その賃金水準が上がるのだ。
過去の移住の研究は、気候変動の影響を受けやすい地域から影響を受けにくい地域への移住によって気候変動による損害が緩和される過程に着目していたとShayeghは考えている。今回の研究では、特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数を示す)に対する移住の影響をモデル化し、国外移住があると他国への移住ができない貧困者と農民における人口構造が変化して気候変動の悪影響を緩和されることをShayeghは示している。
doi:10.1038/nclimate3420
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