Research Press Release
【神経科学】マウスのコカイン摂取意欲を減退させる方法
Nature Communications
2018年1月17日
コカインを摂取する意欲が、顆粒球コロニー刺激因子(免疫細胞が産生するホルモン)によって変化するが、他の報酬に対する応答は変化しないことがマウスの研究で明らかになった。また、このホルモンの効果が、側坐核(報酬処理において中心的な役割を果たす脳領域)によって調節されることも判明した。この新知見は、コカイン常用者のコカイン探索意欲を減退させ、乱用の危険性のない薬物療法をもたらす可能性がある。この研究結果について報告する論文が、今週掲載される。
これまでの研究で、コカインの使用と免疫系の関連性が確定し、薬物関連の合図を見せられたコカイン中毒者の免疫応答が変化することが判明している。今回、Drew Kiralyたちの研究グループは、コカインを使用したマウスにおいて顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)という自然に存在する物質が発現上昇することを明らかにした。そして、報酬に関連する脳領域である側坐核にG-CSFを注入する実験では、マウスのコカイン摂取量が増加したが、より自然な報酬である砂糖水の摂取意欲は変わらなかった。一方、G-CSFを中和する抗体を側坐核に注入する実験では、マウスのコカイン摂取意欲が減退した。
まとめると、動物のコカイン摂取を誘導する生化学的シグナルが、脳の報酬中枢におけるG-CSFを操作することにより変化することが今回の研究結果から示唆されている。
doi:10.1038/s41467-017-01881-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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