【神経科学】社会的相互作用によって2匹のサルの脳が協調する
Scientific Reports
2018年3月30日
2匹のサルの脳活動を初めて同時に測定し、社会的相互作用によってサルの脳が同期する可能性のあることを明らかにした論文が、今週掲載される。
今回、Miguel Nicolelisたちの研究グループは、2匹のサルの脳活動を同時に記録し、社会的相互作用課題において、2匹の脳活動が同期したことを明らかにした。この課題では、第1のサルが「乗客」となって、コンピューター操作による車椅子ロボットで食料供給装置まで運ばれ、第2のサルが「見守り役」として、その一部始終を観察した。「乗客」は、食料供給装置に到達すると報酬としてブドウを受け取り、「見守り役」は、報酬としてジュースを受け取った。次に、2匹のサルは役割を交代して課題に取り組み、脳活動の同時測定が再び行われた。
この脳活動の記録から、「見守り役」の運動皮質のニューロンが、この課題を実行する「乗客」のサルの運動皮質のニューロンと同じように応答したことが示された。Nicolelisたちは、同期した脳活動が、2匹のサルの距離、車椅子と食料供給装置の距離、車椅子の速度などの要因に依存していると考えられることを明らかにした。また、Nicolelisたちは、サルの脳活動の同期は、霊長類の社会的つながりや社会的学習を可能にする神経機構の重要な一部の可能性がある、という考えを示している。
Nicolelisたちは、今回の研究で脳の同期に及ぼす影響を評価したのが、実験下で制御された要因だけ(2匹のサルの距離など)であることに注意を促している。従って、その他の制御されていない要因(例えば、頭部の動き、アイコンタクト、顔の表情など)が脳の同期に寄与した可能性もあると考えられる。
doi:10.1038/s41598-018-22679-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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