【細胞生物学】心筋細胞の増殖を活発にする制御性T細胞
Nature Communications
2018年6月27日
マウスの心筋細胞の増殖能力に対する制御性T細胞の影響を分析した結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究は、胎仔の心臓において心筋細胞の増殖をもたらす細胞因子の解明を進めるものであり、これと同じ細胞因子が母体の心筋細胞の増殖を促進している可能性があることも示唆されている。この新知見は、心臓発作の治療に重要な意味を持つと考えられる。
胎仔の心筋細胞は心臓が発生する過程で増殖するが、新生仔の心筋細胞には、こうした増殖能力がない。このことが、成体の心臓が損傷しても自発的には再生しない主たる理由の1つだ。
免疫細胞の1種である制御性T細胞は、胎仔に対する母体の免疫寛容に寄与することが知られているが、今回、Serena Zacchignaたちの研究グループは、制御性T細胞が胎仔の心筋細胞の増殖を促進していることを示し、妊娠中の母体の心臓においても心筋細胞の増殖を促進していると考えられることを明らかにしている。今回の研究で用いた心疾患マウスモデルにおいて、心臓の虚血性創傷部位付近に制御性T細胞を注入したところ、心筋細胞の増殖が刺激され、心臓の一部の再生応答が促進された。これは、制御性T細胞から増殖促進分子が放出された結果であることが示唆されている。
制御性T細胞に心筋細胞の増殖を促進する効果があることを確認するには、さらなる研究が必要だが、今回の研究で得られた知見は妊娠中の心臓の生物学的性質の理解を深めるものであり、心臓の修復を促進する可能性のある複数の方法が示唆されている。
doi:10.1038/s41467-018-04908-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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