【気候科学】森林管理によって温暖化を摂氏1.5度以下に抑えることができる
Nature Communications
2018年8月8日
産業革命前からの気温上昇を摂氏1.5度以下に抑える活動において、森林による緩和策の方がBECCS(バイオエネルギーと二酸化炭素回収貯留を組み合わせた手法)よりも効率的な気候変動緩和策となる可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。このモデル研究では、生態系をBECCS用作物の栽培に転換して、摂氏2度ではなく、摂氏1.5度の気温上昇に抑えようとすれば、陸地に貯留された二酸化炭素が正味で減少することが明らかになった。
陸地での気候変動緩和策は、BECCSによる場合も新規植林・再植林と森林保全による場合も、気温上昇を摂氏2度に抑える上で重要な役割を果たすと考えられている。これに対して、より積極的な摂氏1.5度という目標を達成するために必要な、広範囲の陸地での気候変動緩和策に対する炭素循環の応答は明確になっておらず、この緩和策の有効性に疑いが生じている。
今回、Anna Harperたちの研究グループは、BECCSと森林管理の手法が含まれるモデルを用いた研究で、気温上昇が摂氏2度のシナリオから摂氏1.5度のシナリオに変えるために必要なBECCSによる土地利用の転換をシミュレーションし、陸上での二酸化炭素貯留量の総量が減少することを明らかにした。二酸化炭素濃度の高い生態系を高収量のバイオエネルギー作物に転換すると、植生と土壌炭素が減少し、BECCSによる二酸化炭素貯留量の増加分が相殺されるのだ。この場合、森林管理が、摂氏1.5度以下の気温上昇で温暖化を安定化させるために必要な炭素収支の均衡をもたらす最も有効な方法ということになるだろう。
Harperたちは、BECCSの有効性を引き出せるかどうかは、その実施の仕方(具体的に言えば、バイオマスの選択、当初の地上部バイオマスの運命、およびエネルギーシステムにおける化石燃料からの二酸化炭素排出量の相殺)にかかっている点を指摘している。それでも今回の研究結果は、生態系をバイオエネルギー作物に転換した場合の炭素循環に対する影響を考慮に入れる必要性を示している。
doi:10.1038/s41467-018-05340-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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