Research Press Release
答えはNO
Nature Medicine
2011年11月14日
一酸化窒素レベルを上昇させる治療法が、先天性の代謝疾患アルギニノコハク酸尿症(ASA)の治療に役立つ可能性があるという報告が寄せられている。
ASA患者では、酵素アルギニノコハク酸分解酵素(ASL)に欠陥がある。この酵素はアミノ酸の1つアルギニンをつくり、次にこのアルギニンを使って、血管の機能を調節する一酸化窒素と、肝臓の不要な窒素を処分に使われる尿素がつくられる。驚いたことに、ASA患者に治療としてこの欠陥酵素の産物であるアルギニンを投与しても、高い効果は得られない。
新しく作成されたASAのマウスモデルを使った実験とASA患者での研究に基づいてB Leeたちは、この矛盾の原因は、ASLが一酸化窒素の生成に別の意外な役割を担っているからであることを発見した。ASLは、アルギニンを一酸化窒素に変換する多タンパク質複合体の構造成分としても働くのである。この構造上の役割のゆえに、ASLをもたない細胞は、アルギニンがあっても一酸化窒素をつくれない。この機構研究の結果をASAの治療に活かそうと、LeeたちはASAのマウスモデルに一酸化窒素レベルを上昇させる作用がある亜硝酸ナトリウムを投与し、これが成長や生存に有益な作用を示すことを明らかにした。
doi:10.1038/nm.2544
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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