【生態学】マラ-セレンゲティの「手付かずの」自然は数千年にわたる牧畜が築き上げたものだった
Nature
2018年8月30日
マラ-セレンゲティのようなアフリカの草原は、数千年にわたって遊牧民によって支えられ、豊かになったことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、マラ-セレンゲティを手付かずの自然のままのサバンナだとする従来の考え方に異論を唱えるものとなっている。
草原は、大型の野生哺乳類集団に加えて、牧畜民とその家畜を支える上で重要な役割を果たしている。一方で、自由に歩き回る家畜の群れはこれまで、景観破壊に関わっていると考えられてきた。最近の研究では、家畜が一夜を過ごす囲いの中に堆積する畜産廃棄物が肥沃なホットスポットとなって植物の成長と草原の多様性を促進することで、景観を豊かなものにしていることが明らかになった。ただし、この効果がどれほど長く継続するかは、現在のところほとんど分かっていない。
今回、Fiona Marshallたちの研究グループは、ケニア南西部のナロック郡にある3700~1550年前の新石器時代のものとされる牧畜地(5カ所)で化学分析、同位体分析、および堆積物分析を行った。その結果、この牧畜地で見つかった分解された畜糞堆積物には、周辺の土壌に比べて栄養素(カルシウム、マグネシウム、リンなど)と重窒素同位体が多量に含まれており、またこの肥沃化が最長3000年間継続したことが判明した。この結果は、マラ-セレンゲティのようなアフリカのサバンナが、「手付かずの」ままの景観では決してなく、牧畜民の影響を数千年間受けてきたことを示唆している。
以上の研究知見は、人間が作り上げた栄養素のホットスポットの重要性に関する生態学的研究に歴史的視点を導入するもので、牧畜の拡大が環境の悪化と本質的に結び付いているという考えに異を唱えている。
doi:10.1038/s41586-018-0456-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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