【生態学】漁業を活用した栄養素欠乏症への取り組み
Nature
2019年9月26日
世界で栄養素欠乏症が最も深刻な国々のいくつかでは、現在の漁業生産のレベルで栄養状態を改善できる可能性があるという見解を示す論文が、今週掲載される。
微量栄養素欠乏症は、年間約100万人が若くして命を落とす原因となっている。しかし、大部分の魚類の栄養組成と漁場別の栄養収量に関するデータがないため、食料と栄養の安全保障に漁業を活用することは難しかった。
今回、Christina Hicksたちの研究グループは、43か国の魚類種(367種)の栄養組成のデータベースを構築して、ヒトの健康に必須の7種類の栄養素(カルシウム、鉄、セレン、亜鉛、ビタミンA、オメガ3脂肪酸、タンパク質)の濃度を評価した。そして、Hicksたちは、予測モデルを用いて、熱帯に生息する魚類種の方がカルシウム、鉄、亜鉛の濃度が高く、小さな魚類種の方がカルシウム、鉄、オメガ3脂肪酸の濃度が高く、寒冷地域の魚類種はオメガ3脂肪酸の濃度が高いことを明らかにした。
次に、Hicksたちは、全世界のさまざまな漁場で捕獲される海洋魚の栄養素濃度を推定し、各漁場の栄養素の質が漁獲量ではなく、捕獲される魚類種の構成によって決まることを明らかにした。Hicksたちは、栄養素欠乏症のリスクがある国民を抱える多くの国々で、鰭のある海洋魚に含まれる栄養素が、海岸線から100キロメートル以内に住む人々の必要栄養量を上回っているという見解を示している。例えば、ナミビアで捕獲される魚類のわずか9%が、その沿岸地域の全住民が食事によって摂取する必要のある鉄の量に相当すると考えられるのだ。
doi:10.1038/s41586-019-1592-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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