【神経科学】脳をスキャンする自転車用ヘルメット
Nature Communications
2019年11月6日
自転車用ヘルメットを改良した装着型脳スキャナーシステムについて報告する論文が、今週掲載される。この装置を使えば、子どもの脳スキャンがより簡単に、高い信頼性で実施できるようになり、生涯にわたる脳の発達の研究が容易になるかもしれない。
脳スキャン技術、例えば、脳内に発生する小さな磁場によって脳の活動を計測する脳磁図は、脳機能に関する有用な情報をもたらす。しかし、大部分の脳スキャナーは成人向けに最適化されているため、乳児と小児の脳活動のモニタリングが難しい。子どもは、大人と頭の大きさが違うことに加えて、脳スキャン中に大人よりも頭を動かす傾向があり、脳スキャンの質に悪影響が及ぶ可能性がある。
この問題に対処するため、Matthew Brookesたちの研究グループは、装着型脳磁計を自転車用ヘルメットに組み込んだ。Brookesたちは、頭部の動きに追従できる小型軽量センサーをヘルメットに取り付け、スキャンの質が被験者の動きに影響されないようにした。これにより、2歳と5歳の幼児の脳が母親のタッチに対して示す反応を記録できた。また、子どもたちは、このヘルメットのレプリカを自宅で着用したり、自転車に乗ったりでき、これによってヘルメットに慣れ親しむことができ、脳スキャン中の不安感の軽減に役立つ。Brookesたちは、ビデオゲームをしている10代の青少年とウクレレを弾いている24歳の若者の脳活動を記録して、このヘルメットがどのような形や大きさの頭にも容易に適用可能なことを実証した。
この脳スキャナーは、科学者が神経発達障害(例えば、自閉症やてんかん)の患者だけでなく、健常者の脳の発達を調べる際にも役立つかもしれない。
doi:10.1038/s41467-019-12486-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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