Research Press Release
【細胞生物学】幹細胞が心臓の修復にどのように役立つのか
Nature
2019年11月28日
移植された幹細胞が、免疫応答を誘発して、損傷した心臓の機能を高めることがマウスの研究で明らかになった。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
損傷した心臓の組織に成体幹細胞を注入する心臓幹細胞療法については、既に数千人の患者が参加して臨床試験が行われているが、結果はまちまちで、期待外れに終わるものが多い。この幹細胞療法の理論的根拠は、ある程度の効果が実証された動物実験に由来しているが、幹細胞の有益な効果の根底にあるプロセスについては議論が重ねられてきた。
今回、Jeffery Molkentinたちの研究グループは、マウスモデルで観察された有益な効果の原因が、以前の研究で示唆された考え方(幹細胞が分化して新しい心筋細胞を形成すること)によるのではなく、移植された細胞によって多数の特異的マクロファージが関係する急性免疫応答が引き起こされ、これが局所的な繊維芽細胞の活性を変化させて、損傷した組織領域の機械的性質を増強されるためであることを明らかにした。Molkentinたちがマウスモデルに対して生存不能な(凍結融解した)幹細胞を注入した場合、および免疫応答を誘導する化学物質を投与した場合でも、これと同じ効果が得られた。この知見は、幹細胞自体が発するシグナルではなく、免疫応答が心臓の修復に寄与することを示唆している。
doi:10.1038/s41586-019-1802-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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