微生物学:スタチンが肥満者の腸内微生物相の構成変化と関連している
Nature
2020年5月7日
ヒトの体の機能不全に関連している可能性のあるBacteroides2(Bact2)エンテロタイプの腸内微生物相は肥満者に多く見られる、という横断解析の結果を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。また、今回の観察研究で、肥満者の場合に、スタチン系薬剤を服用をしている者の腸内微生物相は、そうでない者よりもBact2タイプが少ないことも明らかになった。肥満者の腸内微生物相に対するスタチンの影響を決定するには、前向き臨床試験などのさらなる研究が必要となる。
今回、Jeroen Raesたちの研究チームは、フランス、ドイツ、デンマークの888人からなる横断コホートを調べて、Bact2がボディーマス指数(BMI)と関連しており、Bact2の保有率が痩身者の3.9%から肥満者の17.7%へと上昇することを発見した。Bact2タイプを保有する者は、炎症の程度がBMIのみに基づく予想よりも高くなる傾向があり、Bact2が機能不全に関連するマイクロバイオームの構成だとする学説を裏付けている。また、Raesたちは、Bact2とスタチンの服用が負の相関関係にあることも明らかにした。つまり、スタチン療法を受けている肥満者のBact2タイプの保有率は5.9%と低くなっていたのだ。Raesたちは、それぞれ282人、2345人からなる2つの検証コホートを用いて、以上の知見を再現した。
ただ、Raesたちは、これらの関連の評価をさらに進めるために研究を続ける必要があると注意喚起している。特に、腸内微生物相を調節する治療薬としてスタチンを使用することを検討する前に、今回の研究で得られた知見を無作為化集団で再現できるかどうかを評価するための前向き臨床試験を実施する必要がある。
doi:10.1038/s41586-020-2269-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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