動物行動学:トノサマバッタを敵の大群に変えるフェロモン
Nature
2020年8月13日
バッタが群れになる原因のフェロモンが明らかになったことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この知見は、バッタの大量発生を制御する新しい方法の開発に役立つかもしれない。
最も広範囲に分布し、最も危険なバッタ種の1つであるトノサマバッタ(Locustia migratoria)は、全世界の農業に対する深刻な脅威になっている。今回の研究で、Le Kangらの研究チームは、群生するトノサマバッタが放出する4-ビニルアニソール(4VA)という低分子有機化合物を特定した。この分子は、年齢や性別を問わず、全てのトノサマバッタに対して強力な誘引物質として作用する。孤独相のトノサマバッタ4~5匹を同じ場所に収容したところ、これらのトノサマバッタもこのフェロモンを産生し、放出し始めた。また、4VAは、野外実験でもトノサマバッタを誘引した。
このフェロモンは、バッタの触角にある特定の感覚細胞(鐘状感覚子)によって検出され、この分子が嗅覚受容体OR35と特異的に結合する。Le Kangたちは、遺伝子操作でOR35を欠損させたトノサマバッタが、4VAに誘引されにくくなると報告している。
Le Kangたちは、以上の知見に基づいて、今後の研究の有望なシナリオ候補をいくつか明示している。例えば、合成した4VAを屋外で使用し、トノサマバッタを罠におびき寄せて駆除できる可能性がある。また、4VA分子の活性を阻害する化学物質を放出することで、トノサマバッタが大群になって移動するのを防止できる可能性もある。こうしたシナリオやその他の関連戦略の実行可能性を検証するためには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/s41586-020-2610-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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