公衆衛生:米国ワシントンDCの黒人と白人の間の平均余命の格差分析
Scientific Reports
2020年8月28日
米国ワシントンDCの黒人と白人の平均余命には著しい格差が見られ、その主たる要因が心疾患、殺人、がんであることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Max Robertsたちの研究チームは、1999~2017年の死亡数データを解析して、ワシントンDCの男性と女性の平均余命を算出し、さまざまな年齢層と3つの時期(2000年、2008年、2016年)について、黒人と白人の具体的な死因と、これらの死因が黒人と白人の間の平均余命の格差にどの程度寄与しているのかを調べた。
Robertsたちは、直近の観察期間(2016年)において、ワシントンDCの黒人男性の平均余命が白人男性よりも平均17.23年短く、黒人女性の平均余命が白人女性よりも12.06年短いことを明らかにした。男性の場合、平均余命の格差をもたらす主たる要因は、心疾患、殺人、がん、不慮の傷害(偶発的な薬物中毒など)であり、平均余命の格差に最も大きく寄与していたのは、55~69歳の年齢層では心疾患とがん、20~29歳の年齢層では殺人であった。女性の場合、平均余命の格差をもたらす主たる要因は心疾患、がん、不慮の傷害、周産期の疾患であり、平均余命の格差に最も大きく寄与していたのは55~69歳の年齢層では心疾患とがん、50~59歳の年齢層では不慮の傷害であった。また、米国全体とは異なり、ワシントンDCでは、白人の平均余命が増加し続け、黒人の平均余命が減少し始めており、平均余命の格差が近年拡大していることも分かった。
Robertsたちは、黒人と白人の間の平均余命の格差が、主に黒人居住地域に影響を及ぼす基本的な社会的・経済的原因(環境中の有害物質、高い犯罪率、質の低い学校、十分な医療サービスを利用できないことなど)によっている可能性があると示唆している。
また、Robertsたちは、効果的な教育、雇用機会、安全な居住地域と住宅、質の高い医療を平等に得られるようにすれば、ワシントンDCにおける黒人と白人の間の健康と平均余命の格差が縮小する可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41598-020-70046-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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