Research Press Release
医用生体工学:血液の流れに乗る微小デバイス
Nature Communications
2020年12月23日
毛細血管に到達させることのできる、直径が100マイクロメートル以下のデバイスについて報告する論文がNature Communications に掲載される。このデバイスの設計により、循環系の中でこれまで到達させることが難しかった血管に入り込める可能性が高まり、脳幹などの構造に対する新たな治療選択肢となって、特定の神経疾患の治療に役立つ可能性がある。
従来のカテーテルは、診断だけでなく、治療の目的で、広範な組織に挿入されてきた。しかし、脳血管系など、体内の特定の領域には到達できない。
今回、Mahmut Selman Sakarたちの研究チームは、血液の循環によって駆動され、血管網を通って輸送されるマイクロメートルスケールの柔軟なプローブヘッドを設計した。このプローブヘッドは、極めて柔軟なガイドワイヤーに取り付けられており、複雑に入り組んだ血管を通過できる。プローブヘッドは磁性体で、外部の磁石によって進行方向を制御する。Sakarたちは、一連の実験室での実験と、ウサギの耳の血管内での試験で、このシステムの実現可能性を実証した。
現在、カテーテル治療ができないほど細い血管に到達する能力が得られたことで、脳内の深部の腫瘍や、極めて末梢にある腫瘍に対する新しい治療選択肢の道が開く可能性があると、Sakarたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-20195-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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