Research Press Release
がん幹細胞の性質を持つ細胞を調べるための系
Nature Cell Biology
2011年8月22日
終末分化した培養ヒト非がん細胞を再プログラム化して、通常ならば「がん幹細胞」に関連付けられる特性を示す細胞に変えられることがわかった。この細胞をマウスに注入すると腫瘍増殖が促進される。この実験手法は先々、特定の種類の腫瘍の研究に使えそうだ。
一部の腫瘍でのがん性増殖は、がん幹細胞と呼ばれる特定の増殖的特徴を持つ少数の細胞によって誘導されることが実験により実証されている。マウスでは、がん増殖にかかわるとされているタンパク質の発現によって、当初は非腫瘍形成性の分化したヒト細胞が腫瘍を形成するようになることが明らかになっている。P ScaffidiとT Misteliは、このようなタンパク質の発現によって、少数の細胞が自己複製能をもつ始原的状態をとるようになることを見いだした。この細胞群は、マウスに注入すると、もっと分化の進んだ細胞種を含む腫瘍を形成することもできる。したがって、この特異な細胞集団は、特定の種類のがんで腫瘍形成を駆動すると考えられているがん幹細胞と共通の性質を持っていると言える。このin vitro実験系は、がん幹細胞によって形成される種類の腫瘍の研究に使える、と著者たちは考えている。
doi:10.1038/ncb2308
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
考古学:遠い昔に存在していたナイル川のアフラマト支流沿いに建設されたエジプトのピラミッド群Communications Earth & Environment
-
工学:トカゲにヒントを得た建物系は全倒壊を免れるかもしれないNature
-
動物行動学:雄マウスの仔育てに影響を及ぼすかもしれない細胞Nature
-
進化学:バオバブの系譜をたどるNature
-
気候:2023年の夏は2000年に1度の暑さだったNature
-
健康:高齢者の暑熱曝露のリスクが大きくなるNature Communications