人間行動学:アフリカの現生人類による最古の意図的埋葬
Nature
2021年5月6日
ケニアの洞窟で発見された幼児の骨が約7万8300年前のものと推定され、これが意図的埋葬であり、アフリカの現生人類が埋葬目的で遺体を収容していたことを示す最古の証拠であることが明らかになった。今週、Nature に掲載されるこの発見は、アフリカの現生人類集団が死者をどのように処遇したのかを解明する新たな手掛かりとなる。
現生人類の行動の進化に関する研究は、アフリカの中期石器時代(約28万0000~2万5000年前)に焦点に合わせたものが多いが、行動進化の重要な要素である正式な埋葬が、その時代のアフリカで行われたことを示す証拠は非常に少ない。今回María Martinón-Torresたちは、ケニアの海岸近くにあるパンガヤサイディ(Panga ya Saidi)と呼ばれる洞窟遺跡の中石器時代の地層から採集された2.5~3歳の幼児の部分的な骨格について記述しており、この骨格には、ホモ・サピエンスと同じ歯の特徴が認められた。
Martinón-Torresたちは、この部分骨格を「ムトト(Mtoto)」(スワヒリ語で「子ども」を意味する)と命名し、約7万8300年前に埋葬されたと推定している。発見された骨の断片の配置からは、遺体の足が胸部まで引き上げられた状態で横向きに置かれていたことが分かった。ムトトが横たわっていた土坑は意図的に掘られたものとみられ、遺体は洞窟の地面から掘り取られた堆積物で覆われていた。これらの特徴は、遺体が堆積物で素早く覆われて、その場で分解したことを示す証拠とともに、意図的な埋葬であったことを示している。
この証拠に加えて、以前の研究で中期石器時代に埋葬が行われていたとする仮説が提唱されたことから、アフリカの現生人類の埋葬行動が、少なくとも約12万年前頃から死者を居住地に埋葬するのが一般的だったネアンデルタール人やユーラシアの初期現生人類の埋葬行動とは異なっていたことが示唆されている。以上のMartinón-Torresたちの知見は、アフリカにおけるヒトの進化に関する新知見であるだけでなく、ヒトの進化の地域的多様性を明確に示している。
doi:10.1038/s41586-021-03457-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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