感染症:有望な試験結果が得られたマラリアワクチン
Nature
2021年7月1日
弱毒化したマラリア原虫を接種した後に予防薬を投与して、高レベルの防御免疫を達成するというマラリアワクチン戦略の有効性が、56人の参加者による臨床試験で実証された。この知見を報告する論文が、今週、Nature に掲載される。
マラリアは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が引き起こす疾患で、このマラリア原虫に感染した蚊に刺されることを介して伝播する。マラリア患者の体内では、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト(胞子様の形態)が肝臓に侵入し、肝細胞内で複製する。その後、数千ものヒト感染性マラリア原虫が血流中に放出され、赤血球に感染してさらに増殖し、マラリアを引き起こす。
今回、Patrick Duffyたちの研究チームは、56人の健康な成人ボランティアを化学的に弱毒化した感染性スポロゾイトを使って免疫し、彼らはその数日後に、ピリメタミン(肝臓期のマラリア原虫を殺傷する予防薬)あるいはクロロキン(血液期のマラリア原虫を殺傷する予防薬)を投与された。この試験では、ワクチン接種量が増加すると、ワクチンの有効性レベルが上昇した。例えば、最高用量での接種の場合、最大87.5%のワクチン有効性が達成された。
Duffyたちは、このワクチン戦略が、ワクチンに用いられたのと同じ熱帯熱マラリア原虫株に対してどの程度有効なのかを評価し、異なる原虫株に対する応答も調べた。高用量のクロロキン投与と共に感染性スポロゾイトの接種によって免疫したところ、6人の被験者において、ブラジルで発見された7G8株に対する100%の予防効果が最長3か月間認められた。有効なワクチンとされるには、自然の中で循環する多様な熱帯熱マラリア原虫株に対する防御免疫を達成しなければならないため、このような異種防御が実証されたことは重要である。
doi:10.1038/s41586-021-03684-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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