電子工学:プラスチック基板を使ったマイクロプロセッサーが実力を示した
Nature
2021年7月22日
低コストで十分な柔軟性を備えたスマート集積システムの開発を促進することが期待される、32ビットのフレキシブルマイクロプロセッサーについて報告する論文が、今週、Nature に掲載される。
マイクロプロセッサーは、ノートパソコンから自動車や各種「スマート」デバイスまで、全ての電子デバイスの非常に重要な構成要素である。従来技術であるシリコン技術は、計算装置の世界にあふれているが、シリコンを用いたマイクロプロセッサーの高いコストと柔軟性の欠如は、食品パッケージや衣類のような日用品をよりスマートにする取り組みの実現可能性を制限している。これらの問題に対処できるのがフレキシブルエレクトロニクスだが、意味のある演算を実行するのに十分なトランジスター数を備えたフレキシブルマイクロプロセッサーを作製することは困難だった。
今回、Emre Ozer、John Biggsたちは、高性能プラスチックの一種であるポリイミドを用いたPlasticARMというフレキシブルポリイミド基板と金属酸化物薄膜トランジスターを組み合わせて、十分な柔軟性を備えた32ビットマイクロプロセッサーを作製した。このマイクロプロセッサーは、内部メモリーからプログラムを実行できる回路に集積されている。著者たちは、現行のメモリーは作製後のアップデートができないが、後継製品ではプログラマブルメモリーの実装が可能になると考えている。著者たちは、PlasticARMは、金属酸化物薄膜トランジスターを使って構築されたフレキシブル集積回路の中でこれまでで最も優れたものよりも多くのトランジスターを集積し、約12倍の論理ゲートを搭載していると指摘している。この薄型で低コストのフレキシブルなマイクロプロセッサーは、日用品をスマートデバイスに変える方向に道を開くかもしれない。
doi:10.1038/s41586-021-03625-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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