遺伝学:ウォーレシアの古代人DNAが回収された
Nature
2021年8月26日
新石器時代以前のウォーレシアの狩猟採集民のゲノム規模のデータについて記述された論文が、今週のNature に掲載される。今回の研究で、初めてのウォーレシアの古代ヒトゲノムデータが得られ、東南アジアでの人類の定住を解明するための新たな手掛かりになった。
ウォーレシアは、主にインドネシアの島々(スラウェシ島、ロンボク島、フロレス島など)からなる島嶼の一群である。この地域では、化石が少なく、熱帯気候のために古代DNAが分解しやすいため、この地域の現生人類の集団史はほとんど分かっていない。現生人類は、少なくとも5万年前にウォーレシアを経由してオーストラリア大陸へ移動したが、ウォーレシアにおける人類の存在を示す最古の考古学的証拠は、それより後の時代のもので、その一例が、少なくとも4万5500年前のものとされるスラウェシの洞窟壁画だ。
今回、Adam Brumm、Selina Carlhoffたちは、インドネシアの南スラウェシにあるLeang Panninge鍾乳洞で骨格の残骸が発見されたことを報告している。これは、若い女性のものとされ、約7200年前にToaleanの埋葬複合体に埋葬されていた。錐体骨から回収したDNAの解析が行われ、この女性が、東アジア集団よりも現代の近オセアニア集団に近縁な集団に属していたことが明らかになった。ただし、この女性のゲノムは、未知の分岐したヒト系統のゲノムであり、地球上の他の地域では見つかっていない。
著者たちは、この若い女性の祖先が、現生人類が到来した時からスラウェシ島で生活していた可能性があるという考えを示しているが、この祖先の集団が、スラウェシ島南部で洞窟壁画を描いていたかどうかは不明だ。
doi:10.1038/s41586-021-03823-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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