考古学:人類はいつからタバコを使用していたか?
Nature Human Behaviour
2021年10月12日
ヒトは約1万2300年前にタバコを使用していたことを示唆する考古学的証拠について報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。得られた知見から、タバコは、アメリカ大陸に到達した最初期のヒト集団の一部で使用されていたことが分かった。これは、従来考えられていたより9000年も早い。
タバコ(Nicotiana)はアメリカ大陸原産の酩酊性の植物であり、北米の多くの先住民集団の伝統に重要な役割を果たしてきた。タバコは世界的に使用されており、人間社会に広範な影響を及ぼしている。喫煙パイプから得られたこれまでの証拠から、タバコの最初期の使用者は、約3000年前の農耕導入以前の北米で暮らしていたと考えられていた。
今回、Daron Dukeたちは、ユタ州グレートソルトレーク砂漠にあるウィッシュボーン遺跡で狩猟採集民の居住地跡の遺物を発掘した。Dukeたちは、約1万2300年前の、ヒトが作ったいろり(古代の暖炉)を完全な状態で発見した。その周囲には石器や骨製の人工物が散らばっていた。また、いろりの中から、炭化したタバコの種の遺物が4つ見つかった。別の遺跡では、こうした遺物は噛みタバコの残渣であると考えられてきた。ウィッシュボーン遺跡で見つかった他の遺物からは、タバコが燃料として使用されていなかったこと、また他の動物が食べたものではないことがうかがえた。見つかった遺物には、動物の骨の他に、大型動物の捕獲に使用されていた典型的なハスケット型のやりの先端などが含まれていた。
これらの知見は、ヒトは、タバコの作物化の始まる数千年前から、タバコを使っていたことを示唆している。今回の発見は、タバコの栽培、使用、その後の作物化に至る原動力を、文化的な視点からよりよく理解するための一助となるだろう。
doi:10.1038/s41562-021-01202-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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