生物学:騒音の大きなガソリンエンジンはクジラの休息と授乳の妨げになる
Scientific Reports
2021年11月12日
騒音の大きなガソリンエンジンが搭載されたクジラ観察船は、コビレゴンドウ(Globicephala macrorhynchus)の休息と授乳を著しく妨害するという研究結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
これまでの研究から、クジラ観察船の騒音がクジラの行動に影響を与えることが分かっているが、エンジンの騒音レベルがハクジラ類の行動に及ぼす影響は明らかになっておらず、現在のところ、クジラ観察船の騒音レベルは規制されていない。
今回、Patricia Arranzたちは、スペインのテネリフェ島沖でドローンを使って、コビレゴンドウの母仔ペアの行動を観察した。クジラ観察船のいない場合は13組の母仔ペアが観察され、カナリア諸島のクジラ観察ガイドラインに準拠した騒音の大きなガソリンエンジン、または騒音が抑制された電気エンジンのいずれかが搭載されたクジラ観察船がコビレゴンドウから60メートル離れたところをゆっくりと航行していた場合には、23組の母仔ペアが観察された。Arranzたちによると、ガソリンエンジンを搭載したクジラ観察船が近くを航行した場合の母親は、クジラ観察船がいない場合と比べて、休息時間が平均29%、授乳時間が81%短かった。電気エンジンを搭載したクジラ観察船が近くを航行した場合は、クジラ観察船がいない場合と比べて、休息時間と授乳時間の有意な減少は見られなかった。Arranzたちは、休息時間と授乳時間が短くなると、母親のエネルギー消費量が増え、仔のエネルギー摂取量が減り、仔の生存に悪影響を及ぼす可能性があるという考えを示している。
今回の知見は、たとえクジラ観察船が現行のガイドラインに準拠していても、騒音の大きなエンジンの方がクジラの行動に対する影響が大きくなることを実証している。Arranzたちは、クジラ観察船が発する騒音を最小限に抑え、クジラ観察ガイドラインにエンジンの騒音レベルの最大値を定めて、クジラ類をかく乱する事態を制限することを提案している。
doi:10.1038/s41598-021-00487-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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