惑星科学:NASAインサイトのデータから得られた火星のエリジウム平原の地質に関する知見
Nature Communications
2021年11月24日
米国NASAの火星探査機「インサイト」のミッションで得られた地震データから、火星のエリジウム平原の地表下(深さ約200メートルまで)の画像が導き出され、溶岩流の間に挟まれた浅い堆積層の存在が示唆された。この分析結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、火星の地質学的歴史の解明に役立つ。
探査機インサイトは、2018年11月26日に火星に到達し、エリジウム平原地域に着陸した。火星は、数多くの惑星科学ミッションの目標となってきたが、NASAのインサイトは、地震探査法を用いた地表下の測定を目的とした初めてのミッションだ。
今回、Cédric Schmelzbachたちは、地震データを用いてエリジウム平原の地質組成を解析した。Schmelzbachたちは、この解析データを用いて、浅い地表下(深さ約200メートルまで)を調べた。その結果、地表から順に、主に砂状物質からなる厚さ約3メートルの表土層と、厚さ約15メートルの粗いブロック状の噴出物(隕石の衝突後に噴出され、地表に落下した岩の塊)の層が見つかり、その下層には、約150メートルの溶岩流が確認された。この結果は、これまでに予想されていた地表下構造とほぼ一致している。Schmelzbachたちは、既存の文献に示されたクレーターの数から、地表下の2つの層が約17億年前のアマゾニアン紀の地層で、その下層の溶岩流がヘスペリアン紀の約36億年前の地層と決定した。また、Schmelzbachたちは、この他に厚さ30~40メートルの地震波速度が低い層も確認し、この層には、強い玄武岩層よりも弱い堆積物質が含まれているという考えを示している。そして、Schmelzbachたちは、この層がヘスペリアン紀の玄武岩とアマゾニアン紀の玄武岩の間に堆積物が挟まれた構造、あるいはアマゾニアン紀の玄武岩の中に堆積物が含まれた構造となっている可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-021-26957-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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