古生物学:チリで発見されたアンキロサウルスの新種
Nature
2021年12月2日
チリの亜南極地域で発見され、アンキロサウルスの新種とされる化石が、装甲恐竜の起源と初期進化についての新たな手掛かりをもたらしている。この知見を報告する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、Stegouros elengassenが武器となる大きな尾を進化させており、これが他の恐竜には見られない特徴であることを明らかにした。
かつてパンゲア超大陸の一部だった北方のローラシア大陸で発見された曲竜下目アンキロサウルスは、多様性に満ちた恐竜種で、詳しく研究されている。これに対して、南方のゴンドワナ大陸のアンキロサウルスには、最古のアンキロサウルスが含まれている可能性が高いと考えられているが、その化石はほとんど見つかっておらず、解明が進んでいない。
今回、Alexander Vargasたちは、チリ最南端のマガリャネスで発見された、保存状態が良好でほぼ完全な骨格化石が、後期白亜紀(約7170万~7490万年前)の体長約2メートルの小型のアンキロサウルスの骨格であることを報告している。Vargasたちは、これが、アンキロサウルスの新種であることを明らかにし、Stegouros elengassenと命名した。Stegourosには、他のアンキロサウルスと同様に独特な頭蓋骨の特徴が見られるが、その他の骨格はほとんどが原始的なもので、ステゴサウルスに似た特徴が含まれていると考えられている。また、Stegourosには、武器として使える大きな尾があり、7対の平たい骨性堆積物が融合した葉状構造が、この尾の遠位部全体に形成されている。この点で、他の装甲恐竜に見られる一対の尾部のスパイクや尾錘とは異なっていた。また、Vargasたちが系統発生解析(アンキロサウルスの系統樹を作成するのに相当する)を行ったところ、Stegourosがアンキロサウルスの一種で、特にオーストラリアのクンバラサウルス(Kunbarrasaurus)と南極のアンタークトペルタ(Antarctopelta)に近縁なことが判明した。
Vargasたちは、以上の知見を踏まえて、後期ジュラ紀にパンゲア超大陸がローラシア大陸とゴンドワナ大陸に完全に分裂した後に、両大陸におけるアンキロサウルスの系統樹に別の枝が存在していた可能性があると結論付けている。Vargasたちは、この仮説は、Stegourosの発見によって提起された他の可能性と共に、装甲恐竜の進化、特にゴンドワナ大陸での装甲恐竜の進化に関して解明されていない点が多いことを改めて示していると述べている。
doi:10.1038/s41586-021-04147-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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