地球科学:光速で伝播する信号を利用して地震を監視する
Nature
2022年5月12日
光速で伝播する重力変化信号を評価するよう訓練された機械学習モデルを使用することで、大地震の発生と進行をリアルタイムで正確に推定できることが明らかになった。この知見を報告する論文が、Nature に掲載される。
地震の監視は、通常、地震波の測定によって行われる。地震波とは、地球の地殻内を通過するエネルギーのパルスのことだ。しかし、地震波に基づく警報システムは、大地震(モーメントマグニチュードが8以上の地震)が発生してからその地震のサイズを正確に推定するまでに時間がかかり過ぎることがある。即時弾性重力シグナル(PEGS)は、岩塊の突然の変位による重力の変化に由来し、光速で伝播する。このPEGSを追跡することが1つの解決法として提案されている。しかし、PEGSを追跡することで、大地震発生時からリアルタイムで、大地震の発生位置と進行状況を高い信頼性で迅速に推定できるかどうかは検証されていなかった。
今回、Andrea Licciardiたちは、日本国内の地震発生可能性のある1400地点で発生する地震のモデル化シナリオ(35万点)を用いて、PEGSに関する深層学習モデル(PEGSNetと命名)を訓練した。そして、過去の地震記録の中で最大級で、被害が最も大きかった2011年の東北地方太平洋沖地震の実際のデータを使って、PEGSNetを検証した。Licciardiたちは、PEGSNetが、地震の発生位置だけでなく、地震のサイズと時間の経過による変化可能性を正確に推定できるという見解を示している。重要なのは、PEGSNetが、これらのことを地震波が到達する前に迅速に推定できることである。
Licciardiたちは、PEGSNetが、大地震の発生と進行過程(地表破壊から津波の発生可能性まで)の早期監視にとって重要な意味を持つかもしれないと結論付けている。Licciardiたちは、PEGSNetは日本特有のモデルではあるが、他の地域にも容易に適応させられる可能性があり、わずかな手直しによって、この戦略をリアルタイムで実施できるようになると強調している。
doi:10.1038/s41586-022-04672-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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