疫学:東南アジアでコウモリから伝播するSARS関連コロナウイルスのリスク評価
Nature Communications
2022年8月10日
東南アジアでコウモリからヒトに伝播する重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルスのリスクを評価し、そのマップを作製する方法を示した論文が、今週、Nature Communications に掲載される。今回の研究は、この疾患の異種間伝播(スピルオーバー)が起こりやすい地域における監視プログラムと予防プログラムの設計に役立つかもしれない。 コウモリは、人に感染する可能性のあるコロナウイルス(例えば、SARS関連コロナウイルス)の宿主として知られている。これらのウイルスのヒトへの伝播は、一定の地域で比較的多く見られることが、いくつかの研究で示唆されてきた。 今回、Cecilia Sánchez、Peter Daszakたちの研究チームは、東南アジアでコウモリのSARS関連コロナウイルスが異種間伝播するリスクの分布と頻度を評価するための戦略を考案した。今回の研究では、東南アジアでSARS関連コロナウイルスの宿主であることが知られたコウモリ種(26種)の分布モデルが構築され、これらのコウモリの生息域とヒト集団の居住域の重複部分のマップが作製された。次に、疫学データと確率論的リスク評価を用いて、東南アジアにおけるコウモリ起源のSARS関連コロナウイルスの年間感染者数が推定された。年間症例数の中央値は約6万6000と推定されたが、その多くは、十分な監視が行われていないため、または他の疾患に似ているかもしれないために検出されない可能性がある。ただし、Sánchezたちは、これらの推定値を検証するために、さらに多くのデータ(例えば、中間宿主を介した感染リスクの把握)が必要な点に注意すべきだとしている。 Sánchezたちは、上述した異種間伝播リスクの評価戦略をコウモリ起源の新興疾患への備えを強化するための手段として利用できるかもしれないという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-022-31860-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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