天文学:土星の衛星エンセラダスでリン酸塩が検出された
Nature
2023年6月15日
土星の衛星の1つであるエンセラダスでリン酸塩が検出されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。これまでに地球以外の天体の海洋でリンが検出されたことはなく、今回の発見は、宇宙の「海の世界」の理解を進める一歩として有望視される。
エンセラダスは、氷殻下に存在する全球的な海に覆われている。今回の研究では、この氷殻下の海から放出された氷粒子の分析が行われ、この海の元素組成に関する新たな知見が得られた。これまでのモデルでは暫定結果として、生体必須元素であるリンがエンセラダスの海中に存在することが示されていたが、エンセラダスの海にかなりの量のリン酸塩が含まれているかどうかについては意見が分かれていた。
今回、Frank Postbergらは、カッシーニ探査機に搭載された宇宙塵分析器によって収集されたデータを分析し、エンセラダスの海洋の主要成分を明らかにした。これらの測定では、リンがオルトリン酸イオンの形で検出されただけでなく、実験室レベルのデータと合わせて、利用可能なリンの濃度が地球の海洋よりも少なくとも100倍高い可能性が示唆された。また、こうした測定結果に基づいて作成されたモデルからは、類似した環境パラメーターを有する他の天体の氷の海の世界で、高レベルのリン酸塩が広範に観測されるかもしれないと予測されている。
今回の研究でリンが検出されたことで、宇宙の氷の海の世界に関する我々の理解が充実し、氷の海の環境を構成しているよく知られた元素に関する新たな知見がもたらされた。
doi:10.1038/s41586-023-05987-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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