COVID-19:血中バイオマーカーでCOVID-19感染後の認知障害を予測
Nature Medicine
2023年9月1日
2種類の血中バイオマーカーによって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断後6カ月と12カ月の時点の認知障害を予測できる可能性があることを報告する論文が、Nature Medicineに掲載される。これらの知見は、COVID-19で入院した患者1800人以上のデータに基づいており、別の独立したデータセットでも確認された。これらから、COVID-19による長期的な認知機能障害の原因となる因子について、生物学的洞察が得られた。
「ブレインフォグ(脳の霧)」をはじめとするCOVID-19後遺症の認知障害は、消耗性で日常生活への影響が大きい。その診断には、客観的要素(医師による評価)と主観的要素(患者による評価)が含まれる。しかし、このCOVID-19後遺症の認知障害が発生する仕組みはまだ分かっていない。
Maxime Taquetらは、2020年1月29日から2021年11月20日までに英国でCOVID-19のために入院した1837人の患者のデータを調べた。血液サンプルは入院中に採集され、認知機能の医師による評価と患者による評価は、どちらも6カ月後と12カ月後に行われた。Taquetらは統計学的手法を用いて、COVID-19の急性期離脱後の認知障害と関連性の高い2種類の血液バイオマーカーのプロファイルを特定した。1つ目は高レベルのフィブリノーゲン(血液凝固に関連するタンパク質)で、客観的認知障害と主観的認知障害の両方と相関関係が見られた。2つ目のプロファイルは別の血液凝固タンパク質Dダイマーのレベルの上昇で、ブレインフォグを含む主観的な認知障害だけでなく、疲労や息切れとも関連があった。これらの知見は、米国で1万7911人の患者の診療記録について行われた別の研究(パンデミック〔世界的大流行〕後のコホートとパンデミック前のコホートの比較を含む)でもおおよそ同じであり、Taquetらは、COVID-19におけるDダイマーの特異性が実証されたと述べている。
Taquetらは、これらの知見を利用すればCOVID-19後の認知障害のモデル開発が可能になり、診断や管理が行いやすくなるかもしれないと考えているが、さらに多くのコホートでの研究が必要だとも述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02525-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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