健康:認知症と診断される何年も前のリスク判定に使用し得るタンパク質マーカー
Nature Aging
2024年2月13日
全原因認知症(ACD)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)の診断が下される10年以上前に発症リスクを予測するために使用できるかもしれない血漿タンパク質について報告する論文が、Nature Agingに掲載される。
これまでの研究では、健康な成人における認知症の長期リスクを予測するためのバイオマーカーとして、血漿タンパク質の役割が検討されてきた。しかし、そうした研究は、1種類または少ない種類のタンパク質しか対象としていないものや、英国バイオバンクほど膨大なデータセットに基づいていないものが多く、さらには、長期間(例えば10年)にわたるACD、AD、VaDなどの疾患の発症予測に血漿タンパク質を使用する方法の探究も行われていなかった。そのために、血漿バイオマーカーと特定の認知症に関するデータを用いた大規模研究と10年規模での追跡研究が必要になっている。
今回、Jin-Tai Yu、Jian-Feng Feng、Wei Chengらは、英国バイオバンクのプロテオームデータを詳細に研究し、認知症予測に関連する血漿バイオマーカーを特定し、それを用いて将来のACD、AD、VaDを予測する可能性を調べた。著者らは、今回の研究に認知症にかかっていない被験者5万2645人のデータを含めた。追跡観察期間(中央値14.1年)の間に被験者1417人が認知症と診断され、その内訳は、観察開始から10年以内に診断された人が833人(5年以内の219人を含む)、10年超が584人だった。また著者らは、解析対象となった1463種類の血漿タンパク質のうち、GFAP、NEFL、GDF15、LTBP2が、ACD、AD、VaDの発症に一貫して関連していたことを明らかにした。
著者らは、以上の結果から、10年間にわたるACD、AD、VaDの発症リスクの予測モデルを構築した。この予測モデルにおいては、認知症に関連することが既に分かっているタンパク質(GFAPなど)の予測値が高いことが明らかになった。また、著者らは、GFAP値が診断の約10年前に変化し始めることを明らかにしており、このことで、GFAPが早期リスク評価に用いるバイオマーカーとなる可能性が浮上している。なお、著者らは、今回の研究に関して、独立した外部のコホートを使って検証されていない点を指摘している。
doi:10.1038/s43587-023-00565-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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