心理学:世界的に見ると文化的価値観は多様化しているようだ
Nature Communications
2024年4月10日
文化的価値観は、この40年間に世界的に多様化したが、地理的に近接した国々の間では類似性が高まったとする論文が、Nature Communicationsに掲載される。著者らは、時がたつにつれて、欧米の高所得国の文化的独自性が、世界の他の地域と比べてますます顕著になってきているという見解を示している。これとは対照的に、世界の同じ地域の国々の間では、文化的価値観の類似性が増してきている。
現代の世界では、グローバル化、マスメディア、およびテクノロジーの普及によって、多くの文化の形態の類似性が高まってきているが、文化的価値観は必ずしもそうではない。経済発展によって、自己表現と寛容が助長されるのか、それとも明確なナショナル・アイデンティティーの形成が促進されるのかについては、競合する学説の間で論争が展開されている。
今回、Joshua Conrad JacksonとDanila Medvedevは、人間が居住している大陸の76カ国の40万人以上を対象とした1981~2022年の世界価値観調査のデータを解析した。著者らは、40の価値観(多くは、開放性、従順さ、信仰心に関連したもの)について、文化的多様性を測定した。また、著者らは、この期間中の各国間の価値観の類似性も測定した。その結果、子どもたちが宗教的信条を学ぶことの重要性や売春の正当性など、文化的価値観が世界的に見て多様化している一方で、同じ地域の諸国の間では価値観が収斂していることを示す証拠が見つかった。例えば、オーストラリアとパキスタンの国民はどちらも、数十年前には離婚が正当化されないものと考えていたが、その後、考え方が正反対に進化した。子どもの従順さを重視する姿勢にも同じような変化が見られた。
著者らは、グローバル化だけでは文化的・社会的価値の収斂に至らない可能性があり、富が文化的価値観に及ぼす影響は地域によって異なる可能性があると述べている。例えば、1人当たりGDPの伸びは、2000~2020年の間に、香港とカナダでほぼ同じだったが、同性愛の容認はカナダの方が速いペースで増加していた。また、児童労働の倫理性を重視する姿勢はカナダでは減少したが、香港では増加していた。著者らは、これ以外の価値観に関する研究が今後行われれば、今回の知見の一般化を向上させるために役立つと考えられると述べている。
doi:10.1038/s41467-024-46581-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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