天文学:人工知能が明らかにするブラックホール周辺に生じるフレアの3Dモデル
Nature Astronomy
2024年4月23日
銀河系の中心部にある超大質量ブラックホール「いて座A*」付近の高エネルギーなアウトバーストの画像が、CTスキャンと同様な3D技術を用いて再構成された。このことを報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。今回の知見は、ブラックホールの周囲で明るいスポットがどのように形成されるかについての、より明確な描像をもたらす。
スーパーコンピューターによるシミュレーションは、ブラックホールの周囲を回っている(降着円盤として知られる構造内の)物質が、X線や赤外線、電波で観測できるフレアと呼ばれる高エネルギー事象で周期的に噴出する可能性のあることを示唆している。しかし、観測されたデータからこれらのフレアの3次元構造を再構成することは難しい。
今回、Aviad Levisらは、医療用のコンピューター断層撮影法(CTスキャン)で用いられる方法に類似した新しい撮像技術「軌道偏光断層撮影法」を提案している。Levisらは、2017年4月11日のアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)による観測結果を用いて、電波波長でのフレアの3次元的な状況を調べた。このデータセットから3D画像を再構成することは、その距離と光度における細かな変化のために困難であるが、Levisらは、ブラックホールと電磁放射過程の予測される物理で制約されるニューラルネットワークを用いた、新しいコンピューター技術を活用した。
結果として得られた画像は、フレアが降着円盤の2つの明るいスポットから生じた可能性が高いことを示し、この降着円盤は地球に対してほぼ正面を向いている。スポットはブラックホールの周囲を時計回りに回転しており、その軌道半径は地球と太陽の距離の半分(およそ7500万キロメートル)である。復元されたフレアの構造は、これまでのコンピューターシミュレーションとよく似ており、ブラックホール周辺の極限環境に関する我々の一般的な理解を実証している。
doi:10.1038/s41550-024-02238-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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