神経科学:うつ病は脳ネットワークの拡大と関連しているかもしれない
Nature
2024年9月5日
うつ病の被験者の大半において、健康な被験者と比較して脳のネットワークがほぼ2倍大きいことが観察されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。この発見は、今後の治療介入の新たな潜在的なターゲットを明らかにするものである。
数十年にわたる神経画像研究にもかかわらず、うつ病の人々において確認された脳の構造や結合性の違いはわずかなものであり、それゆえ、この病気の発症のメカニズムやリスク要因に関する現在の理解は限定的なものにとどまっている。さらに、うつ病のエピソード的な性質を考慮した長期的な研究が不足しているため、うつ病における気分状態の変化のメカニズムの調査も限られてきた。
Charles LynchとConor Listonは、うつ病の神経生物学的基盤を調査するために、重度のうつ病と診断された141人(平均年齢41歳)と健康な被験者37人を対象とした一次分析で、精密機能マッピングと呼ばれる技術を使用した。分析は、複数の既存の大規模データセットでも繰り返し行われた。著者らは、前頭線条体顕著性ネットワーク(frontostriatal salience network)として総称される脳領域のグループが、研究対象となったうつ病患者の大半において、対照群と比較してほぼ2倍に拡大していることを発見した。この拡大は、気分状態の変化の影響を受けず、長期間にわたって安定しており、思春期にうつ症状が現れる前の子供でも検出できることが分かった。後者は、前頭線条体顕著性ネットワークの拡大が、潜在的にうつ病リスクのバイオマーカーとして役立つ可能性を示唆している。ただし、著者らはこの関連性を確認するにはさらなる研究が必要であると指摘している。1.5年間にわたって最大62回スキャンした個人の長期分析により、うつ病の症状に関連する接続性の変化が特定された。
要約すると、この研究結果は、うつ病に関連するネットワークのサイズ、形状、および空間的位置の違いを明らかにしている。
Lynch, C.J., Elbau, I.G., Ng, T. et al. Frontostriatal salience network expansion in individuals in depression. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07805-2
doi:10.1038/s41586-024-07805-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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