人間の行動:サッカーは服役中の人のリハビリに役立つかもしれない
Nature Human Behaviour
2024年10月15日
サッカーは、服役中の受刑者が刑務所内での行動を改善し、釈放後の社会復帰を改善するのに役立つ可能性があることを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。これは、プロのサッカーコーチから学習指導や応用可能なスキルを学ぶことで、肯定的なグループアイデンティティーとのつながりを育むことによって達成される。この研究結果は、社会的なつながりが再犯率の低下に役立つ可能性について新たな光を投げかけている。
Twinning Project(ツインニング・プロジェクト)は、服役中の個人の心身の健康を改善するために、サッカーをベースとしたプログラムを組織するイニシアティブである(英国で開始され、現在は米国、イタリア、オーストラリア、および南アフリカでも実施されている)。また、受刑者の刑務所内での行動を改善し、出所後の社会復帰を促すことを目的として、関係構築や自制などのスキルや認定資格の取得も支援している。この取り組みでは、刑務所と地元のプロサッカーチーム(英国のリヴァプールFC〔Football Club〕、マンチェスター・ユナイテッドFC、チェルシーFCなど)を結びつけている。しかし、この取り組みが服役中の受刑者の行動を改善し、出所後の犯罪を減らし、出所者の雇用機会を拡大するかどうかは、まだ明らかになっていない。
Martha Newsonらは、このTwinning Projectの成果を調査するため、まず英国の45の刑務所で服役中の受刑者の刑務所内での行動を分析した。プロジェクトに参加した676人と、参加しなかった1,874人の行動を比較したところ、参加者は、より強い社会的結束を通じて、刑務所内での犯罪が減り、一般的に行動が改善されることが分かった。また、著者らは、元受刑者を雇用する意思に影響を与える要因を調査するため、受刑者を雇用した経験のある1,797人を対象にアンケート調査を実施した。その結果、Twinning Projectのような教育プログラムを修了した元受刑者の方を、そうでない元受刑者よりも雇用する意思が高いことが分かった。
この調査結果は、サッカーが社会とのつながりを育む機会となり、更生を助け、服役中の受刑者の社会復帰を支援する可能性があることを示している。しかし、このプログラムの成功は、刑務所の受刑者の楽観的な姿勢や態度に依存する可能性があると、著者らは指摘している。
Newson, M., Peitz, L., Cunliffe, J. et al. A soccer-based intervention improves incarcerated individuals’ behaviour and public acceptance through group bonding. Nat Hum Behav (2024). https://doi.org/10.1038/s41562-024-02006-3
doi:10.1038/s41562-024-02006-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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