ナノテクノロジー:DNAデータストレージの効率化
Nature
2024年10月24日
DNAへのデータ書き込みの速度と費用対効果を高める可能性のある、DNAベースのデータ保存の新しい手法を報告する論文が、Natureに掲載される。その手法のデモンストレーションでは、DNAに保存された中国の拓本(16,833ビット)の画像とパンダの写真(252,504ビット)が正確に印刷され、読み取られたことが示された。この技術は、持続可能で高密度のデータ保存技術に対する高まる需要に、拡張可能な解決策を提供できる可能性を秘めている。
データストレージに対する需要の高まりにより、従来のシリコンベースの素材では対応が難しくなり、新たなストレージソリューションの模索が進められている。DNAは、その驚異的な記憶密度と耐久性により、有望なストレージ媒体としての可能性を示している。しかし、DNAデータストレージに対する従来の手法は、DNA配列をゼロから合成する(de novo)というプロセスに依存しており、時間がかかり、コストも高く、エラーが発生しやすい。
DNAのエピジェネティックな修飾である自然発生のメチル化から着想を得て、Hao Yanらは、ユニバーサルDNAテンプレート中の塩基を選択的にメチル化してデータをエンコードする、合成を必要としない方法を提示している。このいわゆるエピビットは、従来のビットに類似しており、塩基がメチル化されているか否かに対応する2つのバイナリー値(0または1)の1つとして情報を格納する。著者らは、1回の反応につき350ビットの書き込み出力を報告しており、これはDNAのde novo合成に依存するデータ保存システムの1反応あたり約1ビットの処理能力をはるかに上回る。
この方法は、画像やテキストの保存にも使用できる。さらに、著者らは、バイオラボでの専門的な経験のない60人のボランティアが、この方法でテキストデータのエンコードに成功したと報告しており、その信頼性と実用性を実証している。
Zhang, C., Wu, R., Sun, F. et al. Parallel molecular data storage by printing epigenetic bits on DNA. Nature 634, 824–832 (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08040-5
doi:10.1038/s41586-024-08040-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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