Research Press Release

医学:マウスの子癇前症に対するmRNA療法の提供

Nature

2024年12月12日

マウスを使った研究で、妊娠高血圧症候群の新たなmRNAベースの治療法の可能性を示す論文が、今週のNature に掲載される。この方法では、mRNAを胎盤に標的送達することで、母親の血圧を正常に戻し、胎児の健康状態を改善する。

子癇前症(しかんぜんしょう)は、全妊娠の3–5%に影響を及ぼす胎盤の疾患であり、妊娠中の母体および胎児の合併症や死亡の主な原因となっている。異常な胎盤は、血管毒素を放出し、これが妊娠高血圧症候群(高血圧)の引き金となり、子癇前症の症状となる。そのような毒素のひとつに、可溶性Fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1:soluble Fms-like tyrosine kinase-1)がある。これは血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)の阻害因子であり、血管機能の調節に関与するタンパク質である。現在の治療法には、血圧を医学的に管理し、妊婦と胎児を厳重に監視することが含まれる。しかし、胎盤の機能不全の根本原因に対処する治療法は存在しない。

Michael Mitchellらは、VEGF メッセンジャー RNA(mRNA)を胎盤に送り込み、そこで VEGF タンパク質に翻訳させ、妊娠高血圧症候群における sFlt-1 の増加を抑制する方法を考案した。mRNAは、イオン化脂質ナノ粒子を用いて輸送される。これは、COVID-19 mRNAワクチンなどの治療薬の輸送に実績のある手段である。妊娠高血圧症候群の2つのマウスモデルにおいて、妊娠11日目に治療候補薬であるLNP 55を1回注射すると、実験期間(妊娠17日目)の終わりまで、母体の血圧が改善した。また、著者らはVEGFレベルの上昇と循環sFlt-1の減少も観察しており、mRNAが期待通りに機能したことを示唆している。投与はまた、胎児の体重増加と胎盤血管の部分的回復にも関連しており、症状の重症度の軽減につながっている。

これらの知見は、ヒトの臨床現場で検討される前に、さらなる検証が必要である。しかし、これらの結果は、この重篤な疾患を治療するこのmRNAプラットフォームの潜在能力を示している。

  • Article
  • Published: 11 December 2024

Swingle, K.L., Hamilton, A.G., Safford, H.C. et al. Placenta-tropic VEGF mRNA lipid nanoparticles ameliorate murine pre-eclampsia. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08291-2
 

doi:10.1038/s41586-024-08291-2

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