Research Press Release

Nature Medicine:2025年の医療に影響を与える11の臨床試験

Nature Medicine

2024年12月13日

Nature Medicine の年次特集で、来年の医療に影響を与えそうな11の臨床試験が紹介されている。

「私たちのリストは、2025年に世界が直面する憂慮すべき健康上の課題を反映しており、肥満、がん、栄養失調、劣悪な精神衛生、および酷暑の影響を治療することを目的とした新しい治療法や技術が含まれている。なかには、2つの異なるタイプの遺伝子治療のように、これまでヒトでテストされたことのない新しい治療法もある。また、チャットボットやスマートフォンの技術でメンタルヘルスを改善したり、子宮頸がん検査を支援したり、自閉症の子どもたちが社会的スキルを身につけるのを助けたりするなど、AI革命を取り入れたものもある」とNature Medicine のシニア・エディターであるBen Johnsonは述べる。

特に、ケニアなどの中低所得国の青少年を支援するモバイルツールキットを含む臨床試験の形で、メンタルヘルスが今年のリストに大きく取り上げられている。このツールキットは、子どもたちが自分のメンタルヘルスのニーズを自己評価し、仲間とつながるのを助けるように設計されており、研究者たちは、このような集団における行動的暴力の根本原因を研究することに興味を持っている。別の研究者グループは、11カ国の30カ所で、1,000人が参加する臨床試験で、精神病の治療にカンナビジオール(CBD:cannabidiol)製品(大麻植物からの抽出物)を使用するさまざまな方法をテストしている。

女性の健康もまた、このリストで強調されている重要な分野だ。女性の子宮頸がん検診へのアクセスを支援するために設計された人工知能チャットボットは、女性のスマートフォン使用に関する調査に基づいて設計された。この試験は2025年に完了する予定である。研究者たちはまた、現在主流となっている「画一的な」乳がん検診とは異なるアプローチも研究している。現在進行中の臨床試験には、6カ国で53,000人の女性が参加し、その半数がDNA検査で乳がんリスクを判定された。

ヒトの栄養学に目を向けると、米国国立衛生研究所(US National Institutes of Health)が資金を提供するNutrition for Precision Health Projectの一環として、8,000人の成人を対象とした分析が行われ、研究者たちは人々の食事、遺伝、マイクロバイオーム、生活習慣、および健康歴をカタログ化し、異なる食事パターンがこれらの人々にどのような影響を与えるかを予測しようとしている。一方、ALIMUSプロジェクトでは、ケニアとブルキナファソにおける家庭菜園が、気候変動により土壌の栄養利用率が低下する中で、子供や出産適齢期の女性の栄養ギャップを埋めるのににどのように役立つかを研究する。

また、1,126人の前立腺がん患者を対象に、ルテチウム177(放射性物質を含む薬剤)の前立腺がん治療への使用を研究するPSMAddition試験も注目される。西アフリカのブルキナファソで1,200人を対象とした試験が完了し、室内温度を下げることができる高反射材で覆われた屋根(「クールルーフ(cool roof)」と呼ばれる)が、猛暑の解決策として研究された。一方、Beacon試験では、重症の鎌状赤血球患者を対象に、造血幹細胞を編集する塩基編集と呼ばれる新しいタイプの遺伝子治療が評価されている。この試験では1人の患者が治療中に死亡しているが、それが塩基編集プロセスによるものであるという証拠はなく、試験は現在も進行中である。

  • Year in Review
  • Published: 12 December 2024

Webster, P., Healey, N. Eleven clinical trials that will shape medicine in 2025. Nat Med (2024). https://doi.org/10.1038/s41591-024-03383-y
 

doi:10.1038/s41591-024-03383-y

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