生物学:人工筋肉パッチが傷ついた心臓を修復するかもしれない
Nature
2025年1月30日
幹細胞を用いて開発された筋肉パッチは、副作用なしに機能低下した心臓の修復に役立つ可能性があることを報告する論文が、Nature に掲載される。この有望な結果は、霊長類モデルと1人のヒトの患者で実証されている。ヒトを対象とした臨床試験では、このアプローチの安全性と有効性がさらに検証される予定であるが、最新の知見は、心不全の治療に幹細胞由来の組織パッチを使用する可能性を明らかにしている。
心不全は依然として世界的に主要な死因となっているが、その進行を逆行させる治療法は限られている。心臓移植は臓器の供給量と免疫抑制の面で限界があり、また、人工心臓装置は高額である。代替案としては、心筋細胞を移植して機能不全に陥った心臓を修復する方法があるが、定着率は通常低く、重篤な副作用として不整脈や腫瘍の増殖が起こる可能性がある。
Wolfram-Hubertus Zimmermannらは、人工多能性幹細胞(iPS細胞〔induced pluripotent stem cells〕)を用いて心筋パッチを開発した。iPS細胞は、体内のあらゆる種類の細胞に分化できる細胞である。自己複製能力と心筋細胞に分化する能力を持つiPS細胞は、心臓修復のための細胞源として有望視されている。心筋細胞は、心臓に移植するのに十分な心臓組織を提供する。著者らは、3–6ヶ月間にわたってアカゲザルで試験を行ったところ、これらのパッチが心不全の治療に有効であり、心臓の壁の厚さや収縮力を高めるなど心機能の改善にも効果があることを発見した。これらの発見により、ヒトを対象とした臨床試験が承認され、予備的な結果では、遺伝子操作された心筋パッチが、重度の心不全を患う患者の心臓を安全に再筋肉化できることが示された。
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- Published: 29 January 2025
Jebran, AF., Seidler, T., Tiburcy, M. et al. Engineered heart muscle allografts for heart repair in primates and humans. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08463-0
doi:10.1038/s41586-024-08463-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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