サルとヒトの脳の類似性を研究する
Nature Methods
2012年2月6日
サルとヒトの双方で類似した機能を持つ脳領域を発見する方法が、今週のオンライン版『Nature Methods』で発表される。この方法は、精度の高い進化モデルの構築に向けた道を新たに切り開く可能性がある。特定の刺激または活動に対してヒトと非ヒト種の脳がどのように反応するかを比較するにあたっては、これまで機能的磁気共鳴画像法(fMRI)が利用されてきた。比較を行うfMRI研究の解釈は、脳領域の解剖学的類似性に関する事前情報に依存している場合が多い。Wim Vanduffelたちは、種間活動相関(ISAC)という技術を開発した。これは、脳の構造の差にとらわれることなく、機能が類似した領域を発見することを可能にするものである。ISAC法は、2つの種の間で解剖学的な位置が異なっていても、同じ構造物(手、顔、物体など)に反応するならば、機能が対応する領域は活動の経過が類似しているはずである、という前提に基づいている。研究チームは、映画『続・夕陽のガンマン』の同じ1カットを見せたヒトとサルのfMRI 反応の類似性を調べることにより、ISAC法の有効性を示した。その知見は、ヒトとサルの脳には、機能上、想定外の再構成が生じた領域がある可能性を示唆している。関連するNews and Views記事では、Tor WagerとTal Yarkoniが、この方法が直面するいくつかの制約と課題、および推定された相同性を今後の研究で確認することの重要性を考察している。
doi:10.1038/nmeth.1868
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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