発生中のニューロンでシナプスが動く
Nature Communications
2012年3月7日
シナプスのリモデリングのライブイメージングが行われ、発生中の介在ニューロンから触手に似た突起が生じ、これによってシナプスが脳内分布上の正しい位置に誘導されることが明らかになった。この新知見は、この過程がこれまで考えられていたように静止的なものではなく、もっと活性化していることを示唆しており、関係する機構のさらなる解明が発達性脳障害の新たな治療法の開発に役立つ可能性があることを示している。この研究成果の詳細を報告する論文は、今週、Nature Communicationsに掲載される。 シナプスのリモデリングは、神経ネットワークの確立に非常に重要な意味をもっている。脳内の特殊化した抑制性介在ニューロンのうち、一部のものの樹状突起幹は興奮性シナプスに覆われているが、これまで、この興奮性シナプスが樹状突起幹に到達する過程が明らかになっていなかった。今回、岡部繁男(おかべ・しげお)たちは、細胞のライブイメージングによって、この謎解きを試みた。その結果、発生中の抑制性介在ニューロンに突起が生じ、これが興奮性シナプスと接触し、シナプスの動きを抑制性介在ニューロンの樹状突起幹に誘導することが判明した。これに加えて、岡部たちは、この過程には、微小管と特殊な細胞運動調節因子LIS-1が必要なことも明らかにした。岡部たちは、これらの過程が、正常な脳の発生に必要だと結論づけ、この機構の解明を進めることで、滑脳症のような発達性脳障害の治療法を生み出せる可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms1736
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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