Research Press Release
2つの「顔」を持つ低分子
Nature Communications
2012年2月22日
急性骨髄性白血病において、DNAからのタンパク質合成を阻害することを主たる機能とする低分子RNAが、腫瘍抑制効果と腫瘍促進効果を有することが明らかになった。これにより、この低分子RNAを標的とする薬剤の設計には注意が必要なことが示唆されている。この結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。 急性骨髄性白血病は、血液細胞のがんの一種で、異常な白血球が骨髄に蓄積し、正常な血液細胞の産生を妨害するが、この白血病の主な原因の一つはHOXA、MEIS1という2つのタンパク質の過剰産生だと考えられている。今回、J Chenたちは、マイクロRNA‐196bという低分子RNAが、この2種の発がん性タンパク質の産生を阻害する場合があることを明らかにした。ところが、マイクロRNA‐196bが過剰発現すると、腫瘍細胞の細胞死を促進するタンパク質の産生が妨害されて、もっと悪性度の高い白血病が起こることも同時に判明した。今回の結果は、低分子によるがん細胞の調節が、これまで考えられてきたよりかなり複雑なものである可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms1681
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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